てんからてヤマト、はくりゅうをみつける

とにかく隠し持っているものは出してしまおうという魂胆。
一次創作『てんからて』の主人公ヤマト少年(なんでも拾うクセがある)が、白竜のりょんりょん(名前はヤマトに勝手につけられた)を拾った日の話。


【ヤマト、はくりゅうをみつける】

 ノベルス本サイズという小さな白竜のりょんりょんは、ヤマト少年に拾われて小碓(おうす)家へやってきた。

 という一文で終えるのは間違いではないが、拾うに至る小さなドラマを知る者はいない。
 あの日、小学校の授業を終えたヤマトは、植木が並ぶ歩道をひとりで歩いていた。
 最近手入れがされていない植木は、上にも下にも枝葉が伸び、何かが隠れるにはもってこいの場所だった。
 ヤマトはそんな植木の陰に、白い何かを見つけたのだ。
 普通の人間なら気がつきもしなかっただろう。もしくは見つけたとしても、ゴミや野良猫だと思って素通りしたはずだ。
 そんな些細なことなのに、ヤマトはいちいち気づいてしまう。気にしてしまう。近づいてしまう。
 例えば我が家に住んでいる稲荷狐の白銀(しろがね)。今でもヤマトは覚えている。父と登った二幸山(ふたさちやま)の草木の中に、今と同じように僅かな白があった。近づくとそこには、くたりと横たわる白い……。
「ドラゴン!」
 ヤマトは思わず声をあげてしまった。ハッと息をのみ、周りに人がいないのを確認して、再度まじまじと植木の中を覗き込む。
 ヤマトが今回見つけたのは、小さな白い竜だったようだ。
 外国のおとぎ話に出てくるような姿かたち。身体は純白のウロコにおおわれ、たてがみとまつ毛は艶やかに青く、背中には翼竜のような小さな翼がついている。
 しかし今は、それら全てを地面に押し付けて、ただ静かに横たわっているだけだった。
 ――死んじゃったのかな。
 急いで手を伸ばす。生死の確認をとるためで、他意はなかった。
 しかし竜の鼻先に手が触れた瞬間、
「りゅっ!」
「わあっ!」
 竜が突然跳ね起き、ヤマトの手を噛もうとした。
 寸前で手を引っ込めたものの、反動で後ろにひっくり返ってしまい、慌てて起き上がる。
 再度覗き込んだ植木の中では、小さな竜が鼻息も荒く4つ足で立っていた。
 人間なら仁王立ちといったところか。威嚇のつもりなのだろう。
「だ、大丈夫。なにもしないから」
 おろおろしながらも優しい声で話しかけるヤマト。しかし威嚇のポーズは揺るがない。
 ヤマトは焦った。どうしよう。竜といえば火を吹くイメージがある。ここで火炎放射なんて受けたら、自分も周りも大惨事だ。でもここに竜を置いていくのは……。
 そのとき、そっと風が吹いた。ただのそよ風だ。
 だが植木の中の竜は、ほんのかすかなそよ風にも、ぐらりと体をよろめかせた。
 そこで――ヤマトはやっと気がついた。
 なぜ飛んで逃げない。
 なぜ威嚇しかしない。
 ――立って威嚇するのがやっとなんだ。
「……大丈夫だよ」
 ヤマトは、優しい声でささやいた。竜が安心できるよう、静かに静かに両の手を伸ばしながら。
「怖がらないで。ぼくと一緒においで」
 ヤマトの手が竜に近づく。竜は低く唸りながら、かすかに震えて後ずさる。
 怖がらないで。
「ぼくが助けてあげるから」
 ヤマトが目一杯伸ばした両手の先。
 竜は、深海色の瞳を一瞬きらめかせて。
 ヤマトの手のひらに倒れ込んだ。

「きみはきれいだね」
 小さな白竜を抱いて、ヤマトは通学路の坂道を下っていく。
 竜はぐったりしていたが意識はあるようで、ヤマトの腕の中で「りょーん」と鳴いた。
「さすがにドラゴンの言葉はわかんないや。でもきれいな声だね。それに真っ白で――」
『ゆきみたいだね』
 ヤマトの脳裏に、なんだか懐かしいやりとりが浮かんだ。
 大きな大きな男が、片手で白い狐を抱え、片手でヤマトと手を繋いでいる。
『ああ、雪みたいだな。冷たいからな。死にかけてんだ』
『しにかけ?』
『ああ。でもこいつは普通の狐じゃないようだから、まだ助かるかもしれん。ヤマトが見つけたおかげだ』
『たすけてあげなきゃ』
『そうだな……。ヤマト、お前はやっぱりミヤの子だ。助けてくれよ、これからも』
 俺みたいな奴らをよ。
「……守ってあげるからね」
 ヤマトは坂を下る。
 過去に父が白銀を抱えて歩いた道を、今はヤマトが白竜を抱えて。

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

シン

Author:シン
絵とはやみね作品とエスニックとTFと擬人化と夢と魔法が好き。

記憶力、学習能力がほぼゼロ。
やたら涙腺が弱い。

数年おきに記事をざっくりと消します。

キャラにコスプレさせたがります。

サイトはこちら↓(はやみね作品中心)
スープ!
ついった↓
@domisosoup

カレンダー
08 | 2019/09 | 10
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 - - - - -
ブログ内検索
カテゴリー
最近の記事
最新コメント
月別アーカイブ
リンク
RSSフィード